サービス残業当たり前。休暇も自由に取れず、そもそも休みが無い。低賃金から昇給しない。自腹を切る場面が多い。名ばかりの管理職に就かされる。
いわゆるブラック企業とされる労働環境の悪い会社。自分の会社がそうではないと安心するのはまだ早いのです。
Aさんはインターネット販売を行う会社に勤務していました。日々梱包作業の繰り返しで、昨日と同じような作業を永遠繰り返していました。商品をダンボールに詰め、配送ラベルを作り、貼り、配送会社への手配とお客様へ出荷完了の連絡をする単純作業ばかり。社内で会う人もいつも同じだが、そんなに親しくもないため話題も乏しい。「新しい仕事は自分で見つけるものだ」という先輩からのアドバイスも受けたが、どうして良いかが全く分からない。給与は平均的で休暇はしっかり決まっている。残業もほとんどと言っていいほど無い。社内に苦手な上司は居るものの、別に怒られる事は無かった。ある日朝目覚め、ふと思いました。
「なんか会社行きたくないなぁ・・・」
Bさんは地元のスーパーマーケットの本部に勤務していました。仕事は割りと出来るほうで、新しい仕事をどんどん任されていました。もともと就職希望は銀行職だったけれども、就職難から内定が出たのがこのスーパーマーケットだけ。そのまま就職しました。給料は周りの友人より低かったし、休みは不定期でしたが、法外な事は全くありませんでした。社員とのコミュニケーションやお客様とのコミュニケーション能力も高く、自ら提案する仕事の仕方は各店の店長からも評価が高いものでした。Bさんは仕事に対して真面目で、会社を良くするのが当然だと考えていましたが、ある日ふと思いました。
「なんでここで働いてるんだっけ・・・」
Cさんは一部上場企業である百貨店に就職が決まりました。家族は喜んでくれましたし、友達からもすごいと羨ましがられました。世界中の良い商品を発掘するのが百貨店のバイヤーの醍醐味という、以前見たテレビ番組にあこがれ、第一志望で受けたので、Cさんもとても満足していました。バイヤー志望で入社しましたが、最初の配属先が地下の食料品売り場の管理担当でした。日々店舗の品出しやレイアウト決め、販売管理などを行う仕事。ある日ふと思いました。
「思ってた仕事と違う・・・」
AさんとBさんCさんの話に、あなたはどう思いましたか?共感できる部分がありましたか?
これがマイブラック企業です。あなただけが苦痛に思う、あなただけのブラック企業です。
嘘のような話ですが、大企業に入社すると、早ければ1週間程度で辞める同期を知る事になります。その理由は、「思っていた会社と違ったから」。たったそれだけの理由と思うようなものですが、本人にとっては会社を辞めるに値する理由なのです。今、このマイブラック企業が増えています。そして出来上がるのが「若者は3年で会社を辞める」という社会現象です。
ある社長はこんな価値観を語ってくれた事があります。「朝起きて、あぁ、なんか会社行きたくないなぁと思った時からブラック企業なんだよ。」と。
そうなんです。ブラック企業を決めるのは誰であろう自分自身なのです。そしてマイブラック企業がなぜ生まれるかというと、やりがいが無いからです。
Aさんは単純作業ばかりをさせられていました。もちろん、単純作業ばかりが好きな人もいます。耐えられる人もいます。だからこそ工場のライン生産方式が成立するのですが、単純作業は考える力を奪います。Aさんには、その作業を自分が行う意味も、その作業の先にある将来も見えなくなったのです。日々の暮らしに張り合いが無くなった結果、マイブラック企業化したのです。
Bさんのやりがいは銀行職にありました。志望と異なる企業に就職した際に、新たなやりがいが見いだせなかったのです。結果、自分が残した優秀な成績や他者からの高評価にもかかわらず、それが自分にとって何の意味も無い事に感じた結果、マイブラック企業となったのです。
Cさんは将来的な目標と現在のギャップに苦しんだのです。企業ではまずは基礎から学べ、現場から学べという教育方針を良く採用するので、最初から希望の部署には就かせず、多くを見た上で希望の部署へ移動する道筋を与えます。しかしCさんにはそれが我慢できなかったのです。今の仕事の先に理想の仕事が待っているとしても、それがいつかは分からない、それを今やりたいという思いが強く、結果今の仕事にやりがいが出せず、マイブラック企業化したのです。
今、こうした「やりがい」を持たない、見出だせない若者が大勢います。そして彼らの多くが短期間のうちに転職をするのです。(その多くは再就職でキャリアダウンを余儀なくされます。)
ではどうすればマイブラック企業化しないのか。
それは自己分析と人生プランを描く事である程度の解決が可能です。多くはそれらを大学生時代に行っています。得手不得手、強み弱み、成し遂げた事、やりたいこと、夢、目標、なりたい自分像。できるだけ詳細に、嘘偽りなく作るのです。そしてそれを常に思い、夢の実現に向けて今をどう活動するかを考えるのです。
また、上司との相談によっても可能でしょう。自分が何に悩み、どうしたいと思っているか、目標と現実を伝え、今どうすべきかを問えば良いかもしれません。少なくとも会社を辞めたいと思うなどとは言わない事。日々の仕事に対してやりがいが持てない程度に留めるのがファーストコンタクトとしてふさわしいでしょう。
やってはいけないことは、友人に相談することです。友人に相談しても良い答えは返ってきません。同情の念から同調され、退社願望を強くする結果が待っているからです。
なんだか会社が嫌だなと感じた時は、一度自分の志望動機を再度確認し、将来のために今何をすべきか、じっくりと考える時間を作りましょう。また、会社を嫌だとは感じていないものの、夢や目標が無いというあなたも、一度自分と向き合ってみるべきです。マイブラック企業は常にすぐそばにあることをお忘れなく。