こんな話を聞いたことはありませんか?
「この商品はお客様のニーズに合わせてお作りしているため、売れ行きは好調です」
「顧客のニーズに応えないと売れないよ」
ニーズとは、需要や欲求のこと。これが無いと困る!という物です。生活に必要な物または事。
さて、少し考えてみましょう。ニーズがあったら売れるのでしょうか?ニーズに応じたら売れるのでしょうか?
「消費者の【安心できて美味しいものを食べたい】というニーズに応えて作ったサバ缶」
「お客様の、【もっと綺麗に早く印刷したい】というニーズに応えたプリンター」
いろんなニーズに応えた商品がありますが、そういうニーズに競合する商品はたくさんあります。
プリンターも鯖缶も、驚くほど多くの商品があります。そうした中から選ばれるのは、ニーズがあるから、だけでは片付く話ではありません。
売れる。
お客様の立場から言うと「欲しくなった」という現象が起きたか、もしくは「必要だと思った」という現象が心理的に起きた事になります。
通常お客様任せで接客をせず、また販促活動をしない環境で買い物をさせた場合、お客様は、いつも買っている馴染みの商品を買うか、価格で選ぶか、はたまた好奇心を刺激された商品を選ぶ事になります。そしてその多くの場合、あなたの製品は選ばれる事はありません。
例えばあなたが店頭でiphoneを売っているとしましょう。
この場合、大多数の人の心理状況を見ると「欲しくなった」という事になるでしょう。マスメディアによるプロモーション活動、友人知人のすすめ、新しいものに飛びつく性格。そうした様々な要因によって、お客様は欲しくなったから買うわけです。
ではあなたがノンブランド、また知名度の低いブランド商品を売っている場合はどうでしょうか。あなたの商品を知らない人たちに、便利ですよ、有効ですよ、お買い得ですよ、今が買いですよと思わせるにはどうすれば良いでしょうか。もっとも良く利用される手法に、使用シーンを想起させるという手法があります。テレビショッピングなどでも良く用いられるのですが、「シワでお悩みではありませんか?」「もっと痩せたいと思いませんか?」「庭の芝刈りが大変!とお嘆きのあなたに朗報!」のような謳い文句で、自分のことのように感じさせ、注目を引くのです。これはテレビショッピングに限った事ではなく、店内ポップでも再現が可能ですし、店内接客でも可能です。商品をニーズに合わせる事だけではなく、売り方もニーズに合わせる事が重要なのです。
そうした問いかけによって、お客様は「この商品は自分の苦痛、悩み、苦労、問題、願望、欲求を解決してくれるのだ」と思い込み始めるのです。またそう思う事によって、ノンブランドであっても、認知されていないブランドであっても、魅力的に感じ始めます。あとは売主であるあなたが、持ち前の商品知識を武器に、お客様の問題と対処法をうまくすりあわせながら、「じゃぁこれをください」まで運んでいけば良いのです。
きっとあなたも、洋服選びの際に「何かお探しですか?」という笑顔の問いかけを受けた事があるでしょう。そういう時の返しは大体「見てるだけです」であったり、「いえ、大丈夫です」という返しではありませんか?それはあなただけではありません。また、「良かったら合わせてみてください」「良かったら試着してみてください」も問題外です。「どういうシーンに来ていく服をお探しですか?」「普段着を選んでおられますか?」「どういうテイストがお好きですか?」など、最初から相手が何を問題としているのか、具体的な質問をぶつけて行くべきです。
あなたのお店に入ってきた時点ですべてが見込み客なのです。なに(具体的商品)を探しているわけでは無いのですが、何か(思い描く物)を探しているのです。聞き方次第で顧客は前向きに検討するようにもなりますし、聞き方次第では嫌気がさしてすぐに帰ってしまいます。それと同じように、伝え方次第では魅力的に見せる事ができますし、伝え方次第では買いたいと思わせる事が出来るのです。そして、売れるのです。
但しそれは、適切な商品であり、適切な価格であり、適切なアプローチで無ければなりません。
新入社員のあなたがこれを会得しようとした場合、自分が「つい」買ってしまった時に振り返り、その理由に耳を傾ける事です。そのためには、あなたはより多く外に対して意識を向けなければなりません。
また、先輩社員が売り上げた際、どのような心理的同意がお客様と得られたのか、聞き耳を立てる事もまた、今後の役に立つ事になるのです。