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ゼミナール 経営学入門 | 伊丹 敬之 | 加護野 忠男


伊丹 敬之・・・日本の経営学者。国際大学学長、一橋大学名誉教授。元組織学会会長。カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了、経営学博士。スタンフォード大学経営大学院客員准教授、一橋大学商学部教授、INSEAD客員教授、ザンクトガレン大学客員教授等を歴任し、日本の経営学界において、日本企業の実証研究を第一世代として行った。東芝取締役、JFEホールディングス監査役、商船三井監査役等も務めた。紫綬褒章受章。日経・経済図書文化賞等受賞。ヴロツワフ経済大学名誉博士。

加護野 忠男・・・日本の経営学者。神戸大学名誉教授。専攻は経営戦略論、経営組織論。

wikipediaより

日本における経営学を学ぶ上で、この1冊は欠かすことは出来ません。

裏を返せば、この1冊を読む事によって、経営学を学ぶベースは整うとも言えます。

2003年に第3版として出版された本ですが、原理原則が濃縮された本であるので、現代においても十分に通じる内容となっています。

もちろん2003年なので、今日までの間に法律的に様変わりしているので、その部分のフォローアップは不可欠な事は言うまでもありません。

目次

序章:企業のマネジメントとは
1 企業とはどんな存在か
2 マネジメントとはどんな行為か

第Ⅰ部 環境のマネジメント
第1章 戦略とは何か
1 戦略の定義と内容
2 市場でのポジショニングと経営資源の蓄積
3 戦略と見えざる資産のダイナミックス

第2章 競争のための差別化
1 顧客と競争相手は誰か
2 差別化のポイントと競争の武器
3 市場の変化とダイナミックな差別化
4 反撃への対抗策と非競争への志向

第3章 競争優位とビジネスシステム
1 二つのレベルの競争優位
2 ビジネスシステムの構築
3 競争ドメイン

第4章 多角化と事業ポートフォリオ
1 多角化の論理
2 選択と集中
3 企業ドメインと事業間関連性パターン
4 資源配分によるポートフォリオ・マネジメント

第5章 企業構造の再編成
1 企業の境界線の書き換え
2 資源合体と地図の塗り替え, M&Aと戦略的提携
3 境界線書き換えのマネジメント

第6章 国際化の戦略
1 企業の国際化とその動機
2 経営と国境
3 国のポートフォリオの選択
4 経営資源の移転・活用と空洞化・摩擦
5 経営の政治化と為替変動への対応

第7章 資本構造のマネジメント
1 資本市場との構造的関係のマネジメント
2 資金調達の選択
3 資金提供者の構成と制御

第8章 雇用構造のマネジメント
1 労働市場との構造的関係のマネジメント
2 雇用構造の多面的な影響
3 雇用構造の選択の論理
4 日本企業の雇用構造の特徴とその論理

第Ⅱ章 組織のマネジメント
第9章 組織と個人、経営の働きかけ
1 人々は何をしているのか
2 何で組織を統御するのか:経営の働きかけ
3 組織のマネジメントの全体像

第10章 組織構造
1 構造設計の基本変数
2 組織構造設計で考慮すべきこと
3 いくつかの全社的組織構造の試み
4 選択の基本的トレードオフ

第11章 インセンティブシステム
1 個人のモチベーション
2 組織のインセンティブシステム
3 インセンティブシステムの設計
4 選択の基本的トレードオフ

第12章 計画とコントロール:プロセスとシステム
1 人々が行う計画とコントロールのプロセス
2 計画コントロールシステムの意義
3 計画コントロールシステムの設計

第13章 経営理念と組織文化
1 経営理念とは何か
2 組織文化とは何か
3 組織文化の生成と共有
4 組織文化の逆機能

第14章 リーダーシップ
1 リーダーシップとは何か
2 リーダーシップの源泉とパラドックス
3 リーダーシップの条件

第15章 人の配置、育成、選抜
1 人の配置
2 人の育成
3 人の選抜
4 人事のダイナミックスとジレンマ

第Ⅲ部 矛盾と発展のマネジメント
第16章 矛盾、学習、心理的エネルギーのダイナミックス
1 生まれてくる矛盾
2 矛盾と発展のマネジメント
3 学習のダイナミズム
4 心理的エネルギーのダイナミズム
5 学習とエネルギーの相互作用と矛盾のマネジメント

第17章 パラダイム転換のマネジメント
1 パラダイム転換のむつかしさ
2 パラダイム転換のマネジメント:四つのステップ
3 パラダイム転換としての脱成熟化

第18章 企業成長のパラドックス
1 失敗の効用
2 辺境の創造性
3 オーバーエクステンション
4 ゆれ動き
5 パラドックス・マネジメントの本質

第19章 場のマネジメント
1 場の定義と機能
2 場の位置づけ 場のメカニズム
3 場のマネジメントとは
4 マネジメントのパラダイム転換

第Ⅳ部 企業と経営者
第20章 企業という生き物、経営者の役割
1 企業という生き物
2 経営者の役割

第21章 コーポレートガバナンス
1 コーポレートガバナンスとは何か
2 コーポレートガバナンスの主権論
3 コーポレートガバナンスのメカニズム論
4 コーポレートガバナンスの国際比較
5 株式会社での二重の無責任とコーポレートガバナンス

初学者には簡単?難しい?

Amazon評価で見ても、初心者向けに最適という声と、初心者には難しいという声が分かれています。いずれの場合でも評価は高いのですが、恐らく読者の社会経験に大きく左右されるのではないかと思います。

本書は「企業人と学生の両方を念頭に」置かれている本であるものの、すべてが腑に落ちるようになるには、ある程度の社会経験が必要になる本だと認識しています。

社会経験のない学生でも、経営学とは何かという事の理解は進むと思われますが、そこに書かれている内容を裏付けるような自己の体験があるのと無いのとでは、その理解の深さが大きく変わります。

特に、表面的な部分よりも、深層部分の充実度が他の入門書よりも素晴らしく、他の経営学書では素通りするような部分ですら、そうだったのかと驚嘆させられる知識ばかりです。

その深層部分の理解が、自分の体験と合致して初めて理解できるような部分であり、それは社会経験によってもたらされる、という構図なのではないかと思います。

したがって、学生の間に読了された読者でも、社会人になって改めて読み返してみれば、経営学の面白さに改めて気づくことになるはずです。

組織と人について学ぶならこの一冊

この一冊の真骨頂は組織について深くまで言及していることです。

経営戦略やマーケティングに話が行きがちな経営学のテーマにおいて、そのベースとなる組織とそれを構成する人に徹底的に焦点を当てた内容になっています。

例えば組織構造の問題において、事業部制組織やマトリックス組織といった組織形態の違いをメリット・デメリットで説明する書籍がほとんどですが、それでは理解がなかなか進みません。

どのようなケースにおいて優れており、どのケースにおいて問題が表面化するのか、という使い分けができなければ、実際の現場で判断することが出来ません。

とくに理解がしづらい領域ですが、本書はその組織構造をどう作るか、またそれによってどのような問題が起きるか、どういう点で判断するべきかなども言及されている点でとても優れています。

また、組織における「人の問題」についても深い考察内容が記載されており、モチベーションに関する書籍ではこの本は最初に押さえておきたいところです。

ゼミナール 経営学入門