事業領域(事業ドメインと同義)とは、企業が事業を行う上での範囲を指します。どの範囲までを自社の事業とするのか、という考え方となります。
各種試験においては、企業ドメインと事業ドメインは異なることに注意してください。なお、単一事業を行う企業は、企業ドメイン=事業ドメインが成立します。
ドメインを考える上で、2つの視点があることを押さえてください。物理的定義と機能的定義です。
物理的定義は、見たままの姿であり、JRは鉄道業、トヨタ自動車は自動車製造業といったように、実体に即した考え方を指します。この考え方は事業の拡大という点において、発展させづらい定義とされています。
一方、機能的定義は提供している機能に着目した定義です。例えばキリンビールは自社の事業の活動領域を「発酵・バイオテクノロジーを活用した事業」と位置付け、ビール事業だけではなく医療の分野においても活動を行っています。幅広く事業を展開するのではなく、発酵・バイオテクノロジーが活用できる事業に絞り込んでいます。
事業ドメインを定義する必要性
事業ドメインは経営戦略に分類されます。ドメインを定義し、事業領域を絞り込むことによって、経営資源の必要以上の分散を回避でき、また逆に集中しすぎることを回避できるようになります。
ドメインを絞り込むことで「(経営資源の)分散化の回避」「過度の集中化の回避」が可能となると指摘しています。
経営戦略 大滝精一他著 - 有斐閣アルマ
認識すべき点は、事業領域を絞り込み、経営資源が分散しないことで、どんなメリットを生むのか、という点です。
まず、特定の事業領域に経営資源を絞り込むことにより、その分野における専門性が向上します。研究開発を進めることで、新たな技術・製品の展開が可能になります。
また、事業領域を絞り込むことは、その領域にいる顧客のみをターゲットとすることを意味します。狭い領域の顧客にアプローチすることになり、より顧客ニーズを生かした製品開発につなげたり、効果的に顧客満足度を高めることで顧客生涯価値を高めることができるメリットがあります。
ニッチトップ戦略を採る中小企業は、この事業ドメインの定義が最適であることが多くあります。単純な加工技術ではなく、「特定の素材における超高精度加工」などがその例です。事業領域を超高精度加工の中でもある特定素材のみに絞り込むことによって、その分野における研究開発や技術力に集中する。これにより、その加工技術を向上できるだけでなく、必要とする顧客に効率よくアプローチできるようになります。
特定素材に絞り込まない場合、専門性を高められず、競合他社との差別化が図れない結果となります。逆にさらに絞り込みすぎた場合には、利益につながるほどの顧客を確保できない可能性もあります。
事業ドメインは広すぎず狭すぎない設定が重要といえます。