企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化し、企業は環境に合わせて変化し続けなければなりません。
ここでは、PEST分析やSWOT分析、ファイブフォース分析を取り上げます。
経営とリスク
私生活では怪我や病気、失業や降格などがリスクとして挙げられるように、企業もまたリスクが存在しています。
企業のリスクは、内部要因によりもたらされるものと、外部要因によりもたらされるものに大別することができます。内部要因によるリスクは、従業員の退職による経営力の低下、設備の故障による効率性の低下、顧客ニーズの調査不足による製品開発の失敗などが挙げられます。こうしたリスクは予想や対応がしやすいものです。
一方、外部要因によるリスクは、法律の改正、顧客行動や思考の変化、代替的技術の開発、戦争や暴動など、予測も対応も難しいものが多く存在します。
企業の分析を行う際、こうしたリスクの存在を認識することから始まります。
下記資料は、ヤフーを運営するZホールディングス株式会社の有価証券報告書です。報告書の序盤で今後のリスクについて詳細な説明をおこない、それを踏まえて来期の予想をおこないます。

PEST分析 外部要因分析ツール
PEST分析は、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの側面でリスクを分析するツールです。
政治的環境は、税制の変化や規制、規制緩和が中心となりますが、グローバル化の現代社会においては外交による関係性の変化も欠かすことのできない視点となります。
経済的環境は、景気変動や為替レート、金利、流通の変化、新規求人倍率や失業率などが含まれます。
社会的環境は、人口統計の変化、消費者の価値観、慣習・行動の変化などが含まれます。
技術的環境は、新技術、新製品、新生産方法、新たなサービス提供方法などが含まれます。
こうした情報を集約することで、今後企業が直面する課題をある程度把握することができます。中・長期経営計画や、事業継続計画といった計画策定でも活用される分類ツールです。
SWOT分析 内部と外部の両面から分析するツール
SWOT分析では、企業の内部環境と外部環境の両面から分析するツールです。強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)をそれぞれ洗い出します。
このうち、機会と脅威が外部環境の変化に関する内容です。自社に追い風ならば機会、自社に向かい風ならば脅威となります。
自社の強みと市場の機会を組み合わせ、強みを生かした戦略を模索する。あるいは、弱みを解決したり、脅威となる分野を避ける方針をとるなど、外部環境と自社の状況に応じた戦略策定に活用できるのがSWOT分析です。
ファイブフォース分析 5つの競争要因
マイケルポーター[1985]の『競争の戦略』において提唱されたファイブフォース分析。
企業を取り巻く環境のうち、5つのグループの動向によって利益が左右するというものです。「競争業者」「新規参入」「代替品」「買い手」「売り手」です。
新規参入を狙う企業は、その市場で利益が確保できるという自信によって参入します。そのため、いかに市場に参入させないか、参入障壁をどのように高めるかが重要になります。
また代替品の脅威では、VHS(ビデオテープ)にとってのDVDのように、新たな技術による画期的な製品の登場は、企業にとって大きな脅威となりえます。
売り手は供給業者です。昨今の物価高によって材料価格を値上げする企業が増えています。その材料を購入する自社にとっては脅威となります。
買い手は顧客です。材料を作るメーカーが値上げをした結果、顧客が別のメーカーに乗り換えることは、やはり自社にとって脅威となるものです。
以上のように企業には多くのリスクが存在し、そのリスクを分析する手法が数多く開発されています。
環境適応と環境創造
新型コロナウイルス感染症による社会の大きな変化は、ほぼすべての企業にとって影響をもたらしました。飲食店では感染対策を取らなければ社会的なバッシングを受けたり、来店が期待できない店舗はデリバリー事業に参入を余儀なくされました。一方で衛生用品メーカーは軒並み好業績となり、生産拡大に踏み切りました。
企業はこのように外部環境の変化は追い風にも向かい風にもなります。企業は環境に対し、自社を柔軟に変化させなければなりません。
一方で、社会を変化させたWindowsや、新たなプラットフォームを作ったGoogleやAmazonのように、企業は新たな環境を創造することも可能にします。新素材・新技術・新商品の開発、流行の発信によって、企業側から環境を変化させることで飛躍的に成長する企業も少なくありません。
環境は常に変化をし、企業も変化し続けるため、先を読むことは簡単なことではありません。また、すべての要因を洗い出すことはできません。今回紹介したツールを使って、自分の会社あるいは自分の部署に、どのような機会・脅威が存在するのか、分析してみましょう。