ブランド戦略とは何か
ブランド戦略という経営戦略がありますが、ブランド戦略=高級路線だけではないという事を覚えておくべきです。
ブランドという言葉から、高級路線を取る戦略だというイメージを持つ方が多いようです。一般的にブランド物といえば、エルメスやルイヴィトンのようなものがブランド物が思い起こされます。ウィキペディアでも『ファッション分野での高級品イメージのついた一部メーカー及び商品群を指す(「ブランド物」)。』と明記されています。
ブランドには他にも、トヨタやホンダ、ソニーやアップル、TSUTAYAやゲオ、ダイソーやQBハウスもまたブランドといった有名ブランドがファッション以外にも存在していて、世間中がブランドロゴであふれています。
そもそもブランドとは何か?
ブランドとは、ある共通したコンセプトによってまとめられた集団もしくは財・サービスによってもたらされる、商品サービスに対するイメージのこと。なのですが、少し分かりづらいですよね。そこで、ブランドをこう言い換えてください。「こだわり」。ブランドロゴはこだわりに対するお墨付きです。
JISマークをご存知ですか?安全性や耐久性が、一定レベルをクリアした時にはじめて国が認証する制度で、その認証に合格したものだけがJISマークを許されます。同様に、品質やコンセプト、機能やサービスにおいて自社の基準を定め、それをクリアしたものだけをブランド商品として販売し、ロゴを付与する、または店舗で販売するというものがブランドです。ブランド戦略とは、こだわりを浸透させる戦略なのです。
分かりやすい例を取ると、アップル製品については、先進的かつシンプルなデザインであり、操作性にすぐれ、便利な機能が多く扱っていて楽しいというイメージがあると思います。しかしその裏には創始者スティーブ・ジョブズの比類なきこだわりが無くして誕生しえなかった事は周知の事実です。iPodの試作機を水槽に投げ入れ、空気が入る隙間があるならまだ小さく出来るはずだと小型化に何よりもこだわりました。またボタンも少なく感覚で扱えるものに指定しました。
初代iPodの製品発表会で、僅かな重さ、僅かなサイズに1000曲を持ち運べると発表した際に大喝采が起きたように、そのこだわりがApple iPodというブランドのイメージを作り上げました。担当者が悲鳴をあげるまでのこだわり方があり、それがお客様(市場)へ伝わったからこそAppleの成功につながったと考えられています。
同様にあなたの会社がブランドを立ち上げようとする場合には、他社以上のこだわりが必要になります。
あなたが立ち上げようとするブランド名は何か。
あなたが立ち上げようとするブランドのロゴはあるか。
あなたが立ち上げようとするブランドの対象はどんなお客様か。
あなたが立ち上げようとするブランドはどんなこだわりがあるか。
あなたが立ち上げようとするブランドが譲れないポイントは何か。
あなたが立ち上げようとするブランドはどんなミッションがあるか。
あなたが立ち上げようとするブランド商品にはどんな価値があるか。
あなたが立ち上げようとするブランドを体験したお客様はどう思うか。
以上を可能な限り細部まで議論し、細部まで追求する必要があります。
また、ブランドに対して社員全員が共通の認識を持たなければなりません。
そのブランドの売り場が出来ているか。
そのブランドの売り方を統一させているか。
そのブランドの商品のストーリーを熟知しているか。
そのブランドを好む客層を狙った接客ができているか。
つまりブランド戦略は社内の意思統一が必要という事です。うちのこだわりがどこにあり、何を重視しているかを理解し、どうやってお客様に伝えるかという事を徹底的に考えるのがブランド戦略の要となります。
300年の歴史ある伝統工芸品であっても今まで通りの販売方法では売れません。300年でたどり着いた伝統の技とは何か、どこにこだわりがあるのか、何を守りぬきたいのか、そして使う人に何を感じてもらいたいのか。それが伝わった時にはじめて300年の価値を購入してもらえるのです。最も難しいのはこの「伝える」という事ですが、価値を伝える技術については別の機会にお伝えすることとします。
最後に、ブランド戦略はあなたの会社が作った商品を、適正な価格で購入してもらえる最高の戦略であり、差別化戦略の最たるものです。うまく歯車が噛み合えば、思い通りの価格で販売出来る上に、長年愛用してくれるコアなファンが生まれます。まさに会社の思い通りの販売が出来る歓迎すべき戦略です。ゆえに歯車の調整には長い時間をかけて熟成させなければなりません。ロゴを作れば良いのではありませんし、露出を増やせば良いわけでもありません。
ブランドは会社の顔となります。もうアイデアが出ないというところまでお客様の価値について考え、その価値を感じてもらうために何にこだわり抜くかを、社内で協議し、共有し、熟成させ、発信しなければなりません。それが共感を得たときにはじめてブランド戦略が成功するのです。