競争戦略において①コストリーダーシップ戦略、②差別化戦略、③集中戦略の3つの考え方を学習しました。嶋口充輝は『統合マーケティング』において、競争の地位によって4類型を提唱し、実務でも活用できる形式に昇華させました。
市場プレイヤーには①リーダー、②チャレンジャー、③ニッチャー、④フォロワーの4つが存在し、それぞれ経営資源の量や質が異なり、採用すべき戦略が異なるというものです。
リーダー
リーダー企業は経営資源の量も質も高い企業です。業界市場シェア1位の企業もリーダー企業と呼ばれます。リーダー企業の定石は①周辺需要拡大、②同質化、③非価格対応、④最適シェアの維持、の4点となります。
リーダー企業は経営資源の多さを活用し、市場全体の拡大を図ることを目指します。市場シェア1位の企業であるため、市場全体が拡大することで最も大きな恩恵を得ることができます。現在の市場の周辺需要を取り込むことにより更なる成長を図ります。
一方、競合対策を図り市場シェアを奪われないように取り組む必要もあります。そのため、他社の差別化を打ち消す防衛対策のため、他社が展開する製品を模倣し、2位以下との同質化を図ります。したがって、リーダー企業はフルラインナップ戦略をとることになります。
対する競合企業は低価格でシェア獲得を図る場合がありますが、リーダー企業は安易な低価格追従をしてはいけません。同率の値下げを行う場合でも、シェアが最大のリーダー企業が失う利益額が他社より多くなるためです。
そしてリーダー企業は最適シェアを確保しなければなりません。奪われても、奪いすぎてもいけません。市場シェアを奪いすぎることで独占禁止法に抵触する可能性もあるためです。
チャレンジャー
チャレンジャーは経営資源の量はリーダー企業と同じく多い一方、質がリーダー企業より低いものと定義されます。その名の通り、リーダー企業に果敢にチャレンジする企業で、リーダー企業が採用できない差別化戦略を採用します。
リーダー企業は経営資源が豊富にあり、同質化を図ってきますが、リーダー企業のコンセプトやブランドイメージにより、参入できない分野が存在します。チャレンジャー企業はその分野を見つけ、市場シェアを拡大することでリーダー企業に対抗します。
ニッチャー
経営資源の量は少ないが、その質が高い場合、企業はニッチャーとして活動することがあります。ニッチャーは少ない経営資源を特定の分野に集中させる疑似的独占行動をとります。
嶋口充輝『統合マーケティング』によると、差別化戦略はリーダー企業と戦う戦略であるのに対し、ニッチャーの採用するニッチ戦略はリーダー企業と「戦わない」戦略と位置づけています。
ニッチャーは特定の市場において高い名声を獲得することを目指します。ニッチトップ企業と言われるように、自社の強みを生かして小さな市場においてリーダー企業のようなふるまいをします。
注意すべき点は、その小さな市場を拡大させすぎないことです。拡大させすぎると新規参入の余地を与えてしまい、経営資源の少ない企業が不利になるためです。リーダー企業などが参入するには割に合わない水準にとどめておくことがニッチャーの定石となります。
フォロワー
経営資源の量も少なく質も低い企業はフォロワーとなります。フォロワーが取る定石はリーダー企業やチャレンジャー企業の模倣となります。
従来フォロワー企業の定石として、低価格戦略によるシェア獲得を経たチャレンジャーまたはニッチャーへの転身が指摘されていましたが、大滝精一他著『経営戦略』によると、その戦略は通用しなくなってきたため、フォロワー企業同士の統合を通じた資源蓄積スピードを速める方法が出てきています。