企業は成長しなければ存続が困難となります。既存の方法では、いずれ市場競争に負けてしまうためです。常に変革し続けるためには、変革の必要性を認識し、どこへ向かうかを設定し、歩みださなければなりません。
では組織はどのように学習していくのでしょうか。
知識管理 | 組織の知識はループする
ナレッジマネジメントと呼ばれる管理手法があります。組織が蓄積した知識を管理することによって、新たな知識につなげようとするものです。この代表的な考え方が、野中郁次郎『知識創造企業』で提唱されたSECIモデルです。
SECIモデルでは、知識創造のプロセスは次の4つの段階であると示しました。
共同化→表出下
↑ ↓
内面化←連結化
組織の知識は、作業手順やマニュアルのような目に見える知識から、作業者の勘や経験則のような目に見えない知識があります。前者を形式知、後者を暗黙知といいます。
内面化
新入社員が入社すると、業務を知る必要があるため、通常マニュアルで学ぶことになります。新入社員研修などによって、企業が持っている知識は、形式知から、社員の暗黙知へと変化します。
共同化
マニュアルまたは研修で学び習得した知識を実践することになります。実践を通じて、企業特有の言語や慣習を身に着け、他のベテラン社員とも共通言語で会話できるようになります。
表出化
新入社員の気付きや学びが他の社員とも共有できるようになると、その知識をもとにした建設的な議論が可能になり、他の知識とも合わさることで新たな知識が生まれます。生まれた知識をさらに共有するため、報告書や議事録等に形式知化されます。
連結化
報告書や議事録から、更なる共有を目的としてメールで共有されたり、マニュアル化が図られます。
企業はこうした知識の形式知化、暗黙知化を繰り返していると考えられています。
企業の組織学習のレベル
組織がおこなう学習は次の2つがあるとされています。1つは日々の業務において繰り返しおこなわれる学習です。業務ノウハウの蓄積、効率化への取り組みが挙げられます。これは低次学習またはシングルループ学習と呼ばれるものです。低次学習は組織に対してインパクトをもたらすような影響はあたえません。
一方、新事業展開や経営危機など、業務への考え方を一新させたり、半強制的に変化を余儀なくされる経験による知識は、高次学習またはダブルループ学習と呼ばれます。高次学習は、それまでの企業が持つ価値観や考え方を一変させる意味で、パラダイムシフトが伴います。高次学習で得られる情報は、新しい意味や教訓をもたらすため、「リッチな情報」といいます。
企業運営ではいくつもの危機や転換点を迎えます。その都度企業は学び、経験を得、価値観や考え方を変化させることで、新たな環境への適合を図っていると考えらえます。
自ら変わる必要性を認知する
では危機や転換点を経るとすべての企業でパラダイムシフトが起きるのでしょうか。いくらリッチな情報を得たとしても、企業がその情報を解釈できなければ学習することができません。
桑田耕太郎『組織論』では、組織の創造過程に影響を与えるには3つの条件があると指摘しています。「自律的組織単位」「フェイストゥフェイスコミュニケーション」「冗長性と最小多様性の法則」です。
組織が革新できる情報の創造には、問題解決に積極的にかかわり、自由に考え行動できる自律性が必要であること。アイディアを他者と共有し新たな知識を生み出すためには、フェイス・トゥ・フェイスの対話が最も有効となること。そして共有するための共通知識を持ち得ていながら、一方ですべて同じ情報を持つメンバーではなく、異なる専門的な領域を持っていること。そしてその専門領域を持つメンバーを広げすぎず、適切に配置することで最小有効多様性の原則に従っていることが必要であるとしています。
組織は経験し、学習することで知識を得、また知識を共有することで学習します。そのためには、学習の必要性を認識することが必要であることを覚えておきましょう。