経営学

組織構造 | 組織における理想の形

組織とは、2人またはそれ以上の人々の意識的に調整された活動や諸力のシステムであることは以前に述べたとおりです。

企業には多くの人がそれぞれの役割を果たすことで財やサービスを生み出し、提供することで対価を得ています。より多くの対価を得るためには、より効率的な組織運営が求められます。より効率的な組織を作るための考え方が組織構造です。

組織構造では役割分担をどう決めるか、権限と責任をどう決めるか、どの範囲を部門とするか、調整方法をどう決めるかについて設定します。

拡大とともに組織は変わる

企業をスタートさせることを起業といいます。大資本ですぐに数百人を雇用する起業もありますが、多くは小規模企業として、経営者一人、または数名から起業します。この小規模企業の場合を例に考えていきましょう。

最初はすべて経営者が一人で行っていた事業が順調に軌道に乗りました。経営者は採用を繰り返し、組織は徐々に大きくなっていきます。ですが次第に経営者一人では目が行き届かなくなっていきます。そのため、数名に部下をつける形で管理を任せることになります。

なお、こうして経営者-管理者-部下の構図が出来上がることを階層化といいます。この時、管理者が管理できる部下の人数を統制範囲(スパンオブコントロール)といいます。統制範囲を広くすると、管理者の負担が増えます。また統制範囲を狭くすると階層が増え、管理が複雑になります。

さて、組織もさらに大きくなりました。経営者が行っていた全員の給与計算やシフト管理も、兼務では手が回らなくなりそうです。そこで経営者は経理部、総務部、営業部に分け、専門で活動してもらうことにしました。これを部門化といいます。

事業も順調に進み、経営者は新しい別の事業を始めようと考えました。新しい事業はこれまでの事業と進め方が違うため、混乱を避けるために、これまでの事業と別に専門の部門を作りました。

このように、企業は先の戦略に応じて組織の形を変えることがあります。アルフレッドチャンドラーは、このような組織の変化を「組織は戦略に従う」と命題づけました。

組織にとっての理想の形

先の小規模企業の拡大の例のように、企業はその時々で組織の課題が異なります。組織が大きくなれば、大きくなったことによる問題が生じます。

伊丹敬之[1989]は、組織構造の選択は次の4つの選択であると指摘しました。

・集権と分権
・分化と統合
・調和とコンフリクト
・戦略と効率

権限を集約させれば組織コントロールは容易になります。しかし、その負担が一人に集約し、迅速性が損なわれます。一方、権限を分散させればトップの負担は軽減するものの、組織としての統一性が損なわれる恐れがあります。

経営者は組織をどう変えるか(変えないのか)を、意思決定をしなければなりません。従業員が働きやすく、モチベーションが高まり、仕事に集中しやすい組織。なおかつ経営者が全体を管理し、先導できる体制を構築する。言葉にすれば簡単ですが、実行するのは難しい問題です。

会社によって理想の形は違いますし、規模や時期によっても違います。何を課題と捉えるかによっても大きく変化し、さらには業績に直結します。

これから組織の形態についても解説をします。そのあとで、自分の会社がなぜ今の組織図を採用しているのか、組織構造は何を重視して設計されているかを考えてみてください。その裏には必ず戦略が走っているので、より経営学が面白くなることでしょう。