企業は製品をつくり、市場に投入します。製品を販売することを通じて、企業はより大きく成長を遂げます。その成長をどのように遂げるのか、製品と市場の両面からとらえたものが、アンゾフが提唱した成長ベクトルです。
投入するのは既存の製品か新製品か、投入先は既存の市場か新市場かによって、①市場浸透、②製品開発、③市場開発、④多角化、の4象限に分類したものです。
市場浸透戦略 | 現在の環境でシェアを伸ばす
市場浸透戦略は、既存の製品を既存の市場に投入する、つまり現状の環境で成長する方法です。どのように売り上げや利益を上げていくかを考えるため、対応方法としては、コスト削減や宣伝広告の強化、差別化を図ることとなります。
将来のある時点までに成長する余地がある場合、自社製品の市場浸透を図ります。そのため、市場が拡大していく成長期に採用されやすい戦略です。市場が縮小する成熟期末期や衰退期には、別の戦略を考えるべきでしょう。
製品開発戦略 | 今の市場に新たな製品を投入
製品開発戦略は、既存の市場に新製品を投入する戦略です。既存の製品が陳腐化したり、新たな技術が活用できる場合に、新製品を投入して売上拡大を図ります。
既存の市場に展開するため、顧客とのチャネルはすでに存在するので、宣伝広告のコストは市場開発戦略よりも抑えられます。
市場開発戦略 | 現在の製品を新たな市場へ
市場開発戦略は、現在の製品を新たな市場へ投入する戦略です。日本国内で好調だったものを海外市場でも展開したり、男性向けの商品を女性向けでも販売するなどがこれにあたります。
市場が新しくなるため、それまで知られていない客層に届ける必要があります。チャネル構築が必要なため、宣伝広告のコストがかかります。客層が異なるため、ニーズも異なる場合があり、市場に受け入れられない可能性もあるため、ニーズの調査の精度が求められます。
多角化戦略 | 新たな製品を新たな市場へ
多角化戦略は、新たな市場に新たな製品を投入する戦略です。製品も市場も新しく、これまでの戦略よりもリスクが高い戦略ともいえます。
多角化戦略を採用する動機は、既存の市場が衰退期であり、製品や市場を変えても生きる余地がない場合や、企業の経営資源に余剰(スラック)がある場合に採用されます。
極めてリスクが高い一方、成功すれば新たな経営の柱が生まれるため、結果として急成長を遂げることもあります。
多角化については別の記事において詳しく解説を行います。
製品と市場を決める
以上のように、製品と市場をどのように決めるかによって企業の戦略が異なります。これからどのように成長するかを判断するツールで、4象限で分かりやすいため、実務でも良く目にするものです。自社が置かれた環境をしっかりと把握できることが前提となりますが、この分析によって、製品投入によってどのような課題が生じ、どのような解決方法があるのかを見極めることができます。