第10問
技術志向の企業では、企業価値に占める無形資産の割合が有形資産のそれを大きく上回る企業が多く見られ、知的資産の戦略的経営が注目されている。特に特許は守るだけでなく、企業価値を高めるべくそれを他社と相互に活用したりすることも重要になっている。特許の戦略的運用に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 特許をオープンライセンスすることは、ライセンスを許諾することによって自社技術基盤の上に他社製品をのせて、他社の代替技術開発のモチベーションを下げる効果を期待できるが、ロイヤルティ収入は期待できなくなる。
イ プロパテント戦略は特許侵害に対応すべく、訴訟に訴えて差止請求権や損害賠償請求権などの法的手段で特許を守る戦略であり、知財戦略の基本をなすものである。
ウ 包括クロスライセンス契約では、特定分野についてリスト化された特許の範囲で特許の相互利用が許されるが、その後成立した特定分野の特許についてはリストに加えることは法的に許されていない。
エ 包括クロスライセンス契約を結ぶのは、主として企業間で特許を相互に幅広く利用するためであり、契約提携企業間での金銭の授受を伴うこともある。
特許による保護
特許権は出願の日から20年間の効力がありました。これは経営法務で求められる知識ですのでついでに覚えておきましょう。
さて、特許を取った場合、その特許を取得した人のことを特許権者といいます。特許権者は他者にその特許を使用させて対価を受け取る「実施権」が認められています。特許使用料と呼ばれたりします。特許は、使用できる者を指定する専用実施権と、誰でも使うことができる通常実施権の2通りがあります。
今回のオープンライセンスは通常実施権に該当し、使用にあたっては特許使用料を支払うことで誰でも活用できるものとなります。
こうした特許は、企業のコアコンピタンスに関わるものも多く、企業にとって重要な資産となりうるものです。資産となる特許をより多く発明・取得するとともに、それらを保護し、経営に活用しようとするものがプロパテント戦略です。特許重視とも言われます。
クロスライセンス契約は、複数社間でお互いの特許を使用することを認めるとするものです。基本的には特許使用料を必要としないものですが、契約内容に盛り込めば通常徴収は可能です。
包括的クロスライセンス契約は、ある分野における関連特許であれば双方が自由に使用することを認めるとするもので、特定分野における新特許であってもリストに追加・申告を行えばいつでもこれが可能となります。
よって答えはエです。