平成28年企業経営理論

リーン生産方式 | 企業経営理論H28-15

第15問
わが国の自動車産業におけるリーン生産方式への関心の高まりとともに、チームごとにタスクを振り分け、多能工化した作業員が自律的に職務を行うチーム型作業組織が注目されてきた。官僚制的統制とは異なる組織原理を持ったチーム型作業組織に期待される効果に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 1人1タスクの原則に基づいて、グローバル化や情報化の進展など、経営環境の変化に対する迅速かつ適切な対処能力がある。

イ 自律的な調整のための積極的な参加が求められるため、メンバー間のコミュニケーションが活発になり、互いに助け合いながら共同することによる労働生活の質(QWL)の向上が期待できる。

ウ 多能工化した職務は、自律的に働くことを好まない労働者に対して、複数の技能を獲得することによる職務の充実と、より高度な仕事へコミットすることによる心理的満足をもたらす。

エ チーム型作業組織は、経営者の視点から見た企業の競争優位の源泉としてではなく、労働者が自主的な管理の権限を取得し職務満足へとつなげていく活動としてとらえられる。

リーン生産方式

リーン生産方式のリーンとは、「贅肉のとれた」という意味があります。無駄のない生産方式≒トヨタ生産方式となります。

ちなみにトヨタでは1つのチームは「組」という単位で形成されています。組ごとに決められた仕事が複数あり、組をまとめた単位が「課」となります。

それぞれのチームには、複数の工程があり、1人の作業員は様々な工程作業ができるように訓練され、多能工化されます。多能工となるので1人1タスクとはなりません。チームとしての団結力があるので、経営環境が変化した場合でも迅速適切な対処能力が備わっています。

チームは団結しなければ目標達成ができず、後工程への悪影響を及ぼすことから、チーム構成員には自律性が求められ、積極的な参加が必要となります。チーム内のコミュニケーションが高まれば、やりがいと働きやすさが改善され、労働生活の質も向上します。

ライン作業は単調なものが多いため、単能工の場合はモチベーションが上がりにくい性質があります。多能工化すると、単調と感じる事が減り、必要とされている実感も高まるため、職務の拡大はモチベーションの向上に直結します。

チーム団結力が強まるほど、組織としての強みにつながることから、統率のとれたチームの存在は競争優位の源泉になります。

以上のことから イ が正解となります。

なお、職務の充実は、職責や職権の拡大を伴い、高度な仕事をすることによって心理的満足度を向上させるものであることから、ウは異なる。