平成28年企業経営理論

企業成長と課題 | 企業経営理論H28-17

第17問
企業は比較的規模が小さい創業段階から成長して規模が大きくなるためには、一般に成長段階に応じて異なる経営上の課題を解決していかなければならない。組織の成長段階と克服すべき課題や有効性に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 企業が多数の機能部門を持つような規模に成長すると、経営者は次第に業務的決定から離れ、規則や手続きを整備し官僚制的な組織構造を構築する必要が生じる。

イ 強力なリーダーシップを持つ企業家によって設立された企業は、必要な資源を獲得するために資本家や顧客、労働者、供給業者などから正当性を獲得する必要がある。

ウ 創業段階を経て環境との安定的な関係の構築に成功した企業では、経営者は非公式なコミュニケーションを通じた統制から、次第に権限を委譲しつつ、公式の統制システムを構築しなければならない。

エ 組織の公式化が進み官僚制の逆機能が顕在化した段階では、公式の権限に依拠した規則や手続きをより詳細に設計しなければならない。

オ 単一製品・単一機能で創業した小規模企業が、経営資源を有効に活用するために垂直統合戦略を採用した場合、集権的な機能別組織へ移行する必要がある。

企業成長と課題

経営の規模が大きくなる時には経営者は壁にぶつかります。言ってみればこのステップこそが中小企業診断士の頼られるポイントになるのでしっかり押さえておきたいところです。

企業が多数の機能部門を作るようになると、それだけ責任者の数が増え、それまで経営者のワンマン体制でもっていたものが、権限委譲によって階層化されて行きます。その際、定型的意思決定のようなものから順次引き継がれていき、最終的には戦略的意思決定のみとなっていきます。それまでに、ある程度のルール化や手続き方法を作成し、「誰でもその仕事ができる土壌」を作ることが重要になります。

企業規模が大きくほど利害関係者との関わりも増大していきますから、必要な資源確保のためには企業の正当性を得る必要は多分にあります。

また企業規模が大きくなるほど、規則性や手続きが重要となることは上に述べたとおりですが、そのため利害関係者とのやりとりも、公式の統制システムで対処しなければなりません。社内においても規則性や手続きにしたがって、公式の統制システムでの対応が必要となります。

組織が官僚制組織を強化しすぎるとその逆機能が弊害になります。簡単に言えばルールで縛りすぎであると言える状況であるので、規則や手続きをより詳細に設計すると逆機能をより強めてしまうため、ある程度の緩和が必要となります。

単一製品・単一機能の状態から垂直統合戦略を実施する場合、2つ以上の会社をまとめる事になるので、同様の機能が増えてしまうため、機能別に組織を編成しなおし、集権的に管理することは望ましい方法といえます。

正解はエです。