第18問
現代の複雑な環境においては、確率的に計算しうるリスク管理を超えて、不測の事態に備える危機管理(クライシス・マネジメント)が重要になってきている。一般に危機が発生すると、まず最初に危機管理チームが編成され、危機管理センターが設置される。組織の危機管理に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 危機管理チームと危機が起きている現場とのコミュニケーションが確保できれば、危機管理チームは現場に対し、何を行うべきかだけでなく、いかに行うべきかについても集権的に意思決定することが望ましい。
イ 危機管理チームは、時間の切迫と過重な負荷の中で迅速に意思決定をしなければならないために、組織内の諸資源を十分な自由裁量を持って動員する権限を持つ必要がある。
ウ 危機管理チームは、問題の技術的局面を解決できる役員の他に、社長や法務担当・広報担当役員などのトップマネジメント、時には外部のコンサルタントなども含めて構成する必要がある。
エ 危機発生時には通常の情報伝達システムが破壊されている場合が多いので、常に情報伝達が途絶しないよう注意し、状況に変化があった場合はもちろん、変化がない場合にもその旨を伝える情報を提供し、従業員の心的緊張を和らげるようにすべきである。
オ 組織内の通常の情報伝達システムが遮断されている場合には、危機管理センターを中心として、危機管理にかかわる関係者の連絡先や、必要データの入手先などの情報ネットワークを迅速に確保する必要がある。
危機管理の問題
企業において不測の事態に備えるほどの危機とは、例えば地震や豪雨災害、伝染病などのパンデミック、またコンピュータウイルス感染や戦争などがあります。
危機管理の際に現場は余裕がない事は容易に考えられる事から、常日頃から危機管理に対する現場の最低限の動きは伝達しておく必要がありますし、想定しうる危機の発生度合いが高ければ、マニュアルや訓練をしておくことも必要となります。
とはいえ、実際に危機に直面すると、想定通りにも行きません。早急な対応が必要な場合もありますし、連絡ができない場合も起こり得ます。
アの選択肢では、コミュニケーション方法は確保できている状態ですが、現場にはいません。ある程度の指示出しは必要となりますが、具体的な対処法については現場の判断を優先するほうが望ましい場合があります。
正解(不適切)はアですが、これもあくまでも一ケースの対処法となるので、集権的意思決定をすべき危機的状況であればそうすべきです。イ〜オに関してはそのとおりとなります。
イの場合は、例えば崩壊しそうな建物の中にいる場合、組織員は現場の判断で作業をやめ、直ちに屋外へ避難する事が望ましいですから、危機的状況の際には作業をやめて良い、という権限は与えておく必要があります。
ウの場合は、例えば「危機管理コンサルタント」など専門分野にするコンサルタントもいますし、大手製薬会社がパンデミックに備えるための指導をする場合もあります。自社内での想定では洗い出せない専門家の視点からの意見は必要といえます。
エについては、例えば地震の際には作業員が想定の場所に避難できない場合もあります。各所にトランシーバーを設置し、万一の際には使用できるよう訓練をする。また、安全に避難ができればその旨本部と連絡しあう事も必要になります。
オについては、連絡手段が遮断されている場合、各自のプライベートでな携帯電話に危機対応ページへのアクセスを促すメールを一斉送信して確認したり、関係者連絡先の所在確認などが必要になります。また、危機管理の関係者が万一連絡が取れない場合の代理も立てておくと良いでしょう。
正解:ア