平成28年企業経営理論

労働契約の問題 | 企業経営理論H28-22

第22問
労働契約に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 使用者が、労働者との間で、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約を結んだ場合、労働基準法で定める基準より労働者に有利な部分も含めて、当該労働契約は無効となる。

イ 使用者は、満 60 歳以上の労働者との間で、5年の契約期間の労働契約を締結することができる。

ウ 使用者は、労働契約の締結において、労働契約の不履行について違約金を定めることはできないが、労働者が使用者に損害を被らせる事態に備えて、損害賠償額を予定することはできる。

エ 労働基準法は、使用者が労働者に金銭を貸すこと、及び貸金債権と賃金を相殺することを一律に禁止している。

労働契約

労働法に対する理解度を問う問題です。

組織は一人でも人を雇うと労働条件を定め、また労働保険について加入させなければなりません。就業規則は常時10人以上を雇用する場合に労働基準監督署への提出が義務付けられていますが、これは一人採用した段階でも提出が可能なので早期に実施しておくほうが良いでしょう。

さて今回の問題では労働条件が労基法で定める条件に満たない場合は該当部分だけ無効なのか、全無効なのかという問題ですが、満たない部分だけが基準値へ是正されることとなります。

2018年現在の労働条件では、定年制度を用いる場合には60歳以上に設定しなければなりません。ただし、事業主が60歳以上にはもう無理だと判断する業務を行う場合にはその限りではありません。

また、65歳未満の定年制度を実施している事業主は、定年年齢の引き上げか、継続雇用制度の導入か、定年制度を廃止するかのいずれかを実施しなければなりません。注意すべき点は定年の年齢引き上げ義務化ではないことと、60歳以上を全員雇用することの義務化ではないこと。選択することができるので注意したい。

満60歳以上の労働者との間で5年の期間を定めて労働契約が締結できるか、という点については可能です。期間の定めのある有期雇用契約では、3年を超える期間契約はできませんが、60歳以上である場合はこれが5年まで可能になります。

なお、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、契約者の希望があればこれを無期雇用契約にしなければなりません。また途中6ヶ月未満の無契約期間がある場合にはその前後の契約を合算して5年以上であれば、次の反復更新の際には同様に希望に応じて無期転換契約となります。

労働者に対して事前に損害賠償訴訟を予定した契約をすることはできませんが、損害が発生した場合にはこれを訴訟とすることは可能です。

使用者が労働者に金銭を貸すことは禁止されていません。

正解:イ