平成29年経営法務

著作権とその周辺の権利について | 経営法務H29-11

第11問
以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社の代表取締役甲氏との間で行われたものである。
会話の中の空欄AとBに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

甲 氏
甲 氏
漫画家の乙先生に依頼して、企業キャラクターを作ってもらう予定です。
あなた
あなた
著作権の処理は適切に行いましたか。
甲 氏
甲 氏
報酬を払うのですから、当然、著作権はうちのものでしょう。
あなた
あなた
いいえ、乙先生はそれをライセンス料と思っているかもしれませんよ。キャラクターの絵柄について、その著作者である乙先生は、著作権法上【 A 】権と【 B 】権の2つの権利を有しますから、それぞれの処理が必要になります。
甲 氏
甲 氏
知りませんでした。
あなた
あなた
【 A 】権は契約によって譲り受けることができます。一方、【 B 】権は譲り受けられませんから、異なった権利処理をする必要があります。注意してください。
甲 氏
甲 氏
ありがとうございます。早速、顧問弁護士に相談するようにします。

解答群
ア A:著作 B:著作者人格

イ A:著作 B:著作隣接

ウ A:著作者人格 B:著作

エ A:著作者人格 B:著作隣接

著作権について

著作権には2つの権利があり、1つは著作権、もう1つは著作者人格権です。

今回の会話において、企業のキャラクターを作ってもらう甲氏は、これから漫画家に報酬を払う予定とありますが、このとき「あなた」が危惧しているのは、キャラクターを使うことが許可されているだけで、権利物として譲渡対象としたり企業ニーズに合うように改変することまで含まれていないのではないか?ということと推定されます。

仮にライセンス契約であっても、その著作物を「使用」することは可能です。契約範囲に従い、印刷物に掲載して利用できることもあります。

ただ例えばキャラクターが「おすすめはこちら」など指をさすものに勝手に変更させたり、喜怒哀楽の表情を勝手に付け加えるなどすれば、それは著作者人格に関わる権利の範囲なので断られることもあります。

また、企業から依頼を受けて作成したものの、漫画家がそれを公表するなと言えば公表できないことになりますし、漫画家乙先生の名前を出さないでほしい、または別名で登録したいと言われればそれに従うしかありません。

これら著作者人格権についても権利者としっかり検討議論した上で契約・処理する必要があるので注意したいところです。

ちなみに著作権は創作から50年(映画の場合は70年)が存続期間となります。著作物にはアプリケーションソフトのような電子著作物や日本舞踊やバレエ、くちずさんだリズムなども含まれます。

答えはアとなります。