第6問 以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社の代表取締役甲氏との間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
設問1 会話の中の空欄AとBに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア A:できます B:できます
イ A:できます B:できません
ウ A:できません B:できます
エ A:できません B:できません
設問2 会話の中の空欄Cに入る語句として、最も適切なものはどれか。
ア 特許権及び商標権
イ 特許権、特許出願後の特許を受ける権利及び商標権
ウ 特許権、特許出願前の特許を受ける権利及び商標権
エ 特許権、特許出願前の特許を受ける権利、特許出願後の特許を受ける権利及び商標権
知的財産権の権利移転
知的財産権の権利移転については、それぞれに規定があります。
その前に定義を確認しておきましょう。
また、知的財産権のうち、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つの権利を「産業財産権」と定義されています。
特許庁によると、産業財産権について「これらの権利は、特許庁に出願し登録されることによって、一定期間、独占的に実施(使用)できる権利となります。」と説明がされています。
つまり、産業財産権は出願し、登録されることが効力発生要件になっています。
特許権の権利移転
移転する場合には、特許庁長官への届け出を持って特許権の効力が発生するものと定められています。難しい話になるので、例を1つ作ります。
株式会社Xは、自社の研究による成果であることから、相応の対価を支払うことを条件として、特許を受ける権利を移転してほしい旨、従業員Aに口頭で伝え、従業員Aはこれを承諾しました。当事者間の契約が成立したので、「特許を受ける権利」は問題なく株式会社Xに移転されました。
株式会社Xは、移転された特許を受ける権利を元に、法人として特許庁に特許申請を行い、これが正常に受理・登録されました。これをもって、「特許権」の効力発生となりました。
しばらくのち、株式会社Yがこの製造装置に着目し、特許の専用実施権を申し出、株式会社Xはこれを受諾、特許庁へその旨の手続きを取り、株式会社Yだけが特許利用をできることになりました。
しかし株式会社Xが財政的に厳しい状況になってしまったため、この製造装置の特許を譲渡したいと考え、株式会社Zに打診したところ、買い取ってもらえることとなり、特許権の名義変更を特許庁に申請し、無事に登録されたことにより「株式会社Yが専用実施権に設定されている特許権」の移転が完了し、効力発生要件を満たしました。
特許権は、特許を受ける権利と、特許権そのものの譲渡は可能です。また特許権については専用実施権や通常実施権が設定されていたとしても、利用者への許諾を取ることなく移転手続きを行うことができるものとされています。
ただし、特許権を持っている会社が倒産したり、解散したりすると、譲渡は自由にできません。倒産している場合は管財人が、また解散手続き中であれば清算人がこの特許権の譲渡を決定することができ、会社が自由に手続きをすることはできません。
選択肢の中に、「特許出願前の特許を受ける権利」「特許出願後の特許を受ける権利」の2つがありますが、特許出願前については、上の例文の中にあるように、当事者間の合意によって効力を発生させるものなので、特許出願前は不適切になります。
特許出願後、登録される前の特許を受ける権利については、変更届出によって効力を発生させることができますので、登録によってではありません。
商標権の権利移転
商標権も先ほど述べたように、登録によって効力発生となります。商標権は商品・サービス(役務)とマークの組み合わせを1つの権利で保護するものです。そのため商品ごとやサービスごとに異なる権利ですから、例えば1つだけの権利を譲り受けるなどが可能になります。
権利を移転させる場合は、申請をし、登録原簿に記載されて効力発生となります。
その他
意匠権に関しては、本意匠と関連意匠を分けて権利移転する事はできないため、関連意匠の一つだけを権利移転させる事はできません。これは特許権の請求項ごとに権利移転できないものと同様に、それらもまとめて1つの権利として考えるためです。
また権利に関しては権利者が法人である場合は、その法人が消滅した場合、権利自体も消滅します。そのため清算結了前であれば権利移転が可能ですが、清算結了後ではできない事に注意が必要です。
答えは設問1 ウ / 設問2 ア