第11問
昨今、外国人労働者の受け入れの是非が議論されている。
2種類の生産要素、資本 K と労働 N を用いて、生産 Y が行われる。資本と労働、そして生産との関係を、労働1単位あたりの資本と労働1単位あたりの生産との対応関係である、次の生産関数で表す。
y = f(k)
ここで k = K/N は資本・労働比率を、y は労働1単位あたりの生産量を表している。また、労働供給は一定率 n で増加し、常に完全雇用が実現しているとする。また人々は、所得の一定割合 s を常に貯蓄するとする。
新古典派の経済成長モデルの下図を参照した上で、外国人労働者の継続的な受け 入れによる労働成長率の上昇が、定常状態における資本・労働比率と労働1単位あたり生産量に与える影響に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。ただし k1 は、定常状態の資本・労働比率を表している。

解答群
ア 資本・労働比率は上昇し、労働1単位あたり生産量は減少する。
イ 資本・労働比率は上昇し、労働1単位あたり生産量は増加する。
ウ 資本・労働比率は低下し、労働1単位あたり生産量は減少する。
エ 資本・労働比率は低下し、労働1単位あたり生産量は増加する。
※本項目の解説には疑義が生じています。回答は最下部にありますが説明については別参考書等をご確認いただくことを推奨いたします。
新古典派の成長モデル
y = f(k) ・・・(1)
まず(1)の式を見ていきます。
新古典派の生産関数では、Yは産出量を示しています。Kを資本ストック、Aを労働力の効率性、Nを労働者数とすると、
Y=F(AN,K)・・・(2)という式で表されます。
ここまでは、産出量は投入する労働者と労働の効率性と資本ストックの関数で導き出せますよ、という事になります。
これを1人当たりで見ていきたいので、定数を当ててやる事にします。
(2)の式にλを掛けると
λY=F(Aλ(N),λK)・・・(3)と変換します。
一人当たりの産出量は、労働効率性と一人あたりの資本ストック、という式です。
式を簡易にするために、(3)のλに1/ANを代入します。
Y/AN = F(1,K/AN)・・・(4)となります。
y=Y/AN , k=K/ANと置き換えれば、(1)の式になります。
つまり、y = f(k) は、労働1単位で見た場合の生産量という事です。

ソローモデル
労働者は所得の中から一定額を貯蓄に回します。
新古典派の考えとして、家計は貯蓄した額を資本ストックで企業に貸す事を考えるものとしており、家計の資本ストックは企業に対して供給される、という構図が生まれます。
資本ストックK側から考えれば、t+1期目に家計から供給される量を
Kt+1=(1-δ)Kt+St・・・(5)と表せます。
(5)は企業の資本ストック購入 Kt+1=(1-δ)Kt+It を変えたものです。
1-δ は資本減耗分、設備が減った分を意味しています。
つまり、t+1期における資本ストックは、Kt期分の資本減耗に、(家計から供給された)投資分Itを足したもの、という式になります。
(4)より、一人当たりの資本 K/ANをkとすると、人口の増減を考慮したい場合、人口増加率をnとすると、nkで表せます。
問題文でも「 労働供給は一定率 n で増加し、常に完全雇用が実現しているとする。 」とあるのはこの部分に当たります。
グラフのy=nkは、人口増加に対する資本ストックの量です。
「 定常状態 」というのは労働者一人当たりの資本は常に一定であり、資本ストックの増減は人口増減によってのみ左右される事を意味します。
さて、産出量はy = f(k) という曲線で表されており、貯蓄を考慮した労働者の産出量がy=sf(k) という曲線で表されています。
資本ストックの量が今y=nkで表されており、k1の比率にあります。

この時、労働力が足りない分だけ企業は資本で補うので、労働1単位当たりの生産量はyの量生産される、という事が示されています。
いま、人口が増加したとすると、nが増加することになり、y=nkの線の傾きが急になります。
その場合、資本労働比率はk1よりも左に移動、比率低下となり、生産量は減少することになります。
以上より、ウが正解となります。