第7問 総需要曲線(AD)と総供給曲線(AS)が下図のように描かれている。ただし、P は 物価、Y は実質GDP、Yf は完全雇用 GDP であり、E が現在の均衡点である。下記の設問に答えよ。
設問1 総需要曲線の右シフト要因として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 中央銀行による買いオペレーションの実施
b 政府支出の削減
c 所得減税の実施
d 民間銀行による融資縮小
解答群
ア aとb
イ aとc
ウ bとd
エ cとd
設問2 総供給曲線に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a GDP が完全雇用水準を下回っても、つまり非自発的失業が存在しても、名目賃金率が硬直的であれば、総供給曲線の形状は右上がりになる。
b GDP が完全雇用水準を下回っても、つまり非自発的失業が存在しても、実質賃金率が硬直的であれば、総供給曲線の形状は右上がりになる。
c 技術進歩が生じると、総供給曲線は下方にシフトする。
d 原油価格が高騰すると、総供給曲線は下方にシフトする。
解答群
ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd
総需要曲線の右シフト要因
問題文に、Y は実質GDPと指定されていることから、Y=C+I+G+EX-IXのいずれかが拡大された時にシフトすることが想定されます。
a 中央銀行による買いオペレーションの実施
中央銀行による買いオペレーションによって市中への貨幣供給量が増加します。市中の貨幣が増加することにより投資が刺激されることから右シフトします。
b 政府支出の削減
政府支出の中には公共事業や補助金なども含まれますが、これらが削減されることで総需要は縮小し、左シフトすることになります。
c 所得減税の実施
所得減税によって実質的な国民所得は増加することになります。所得の増加は消費を促進させ、需要を喚起しますので、右シフトします。
d 民間銀行による融資縮小
民間銀行が貸し渋ることで企業はお金が借りづらい状況に陥り、投資が抑制されます。aとは逆のパターンです。よって左へシフトします。
設問1はイが正解になります。
総供給曲線から読み解く
設問2のa bは、名目賃金率か実質賃金率かの違いだけで少し難しい問題です。
総供給曲線が右上がりなのはケインズ派の基本ケースで、この場合、名目賃金率が一定であるという仮定に基づいています。物価が上がれば国民所得が増加するというものです。
なお、古典派の総供給曲線は実質賃金率の変動によって常に需要と供給が等しいとするので垂直の総供給曲線で描かれます。
総供給曲線が下方シフトするということは、価格が低下しても利潤を追求できるようになる現象が起こったと考えられるでしょう。
例えばcにあるように、技術進歩によってより安い価格で生産できるようになった場合などがそうです。
dのように、原油価格が高騰する場合は、利潤を圧迫する分値上げされるため、上方にシフトします。