平成28年経済学

収穫逓減と収穫逓増についての問題 | 経済h28−22

第22問

多くの地方自治体が、地域活性化の手段として、企業誘致に取り組んでいる。企業の市場への参入や立地は、企業の費用構造や他の企業との関係性と密接な関連をもつ。企業行動に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 収穫逓減産業では、限界生産力が低下するので、範囲の経済のメリットを享受しうる。
b 収穫逓増産業では、生産規模の拡大を通じて規模の経済のメリットを享受しうる。
c 企業が集中して立地することにより集積の経済のメリットを享受しうる。
d 費用逓減産業は、長期平均費用が低くなるので、中小企業にとって参入が容易である。

解答群
ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd

収穫逓増と収穫逓減

収穫逓増は、生産量が増えるほど、投入コストあたりの生産量が増加していくものをいいます。
収穫逓減は、生産量が増えるほど、投入コストあたりの生産量が減少していくものをいいます。

大量生産品などは、例えば1000個作るところを、1001個作ったとしても、コストはあまり変わりません。最初の1個だけを作る方が1個あたりのコストは大きく、徐々にコストあたりの生産量は増えていきます。

パン屋などは10個一気に焼き上げるオーブンがあるとして、100個作ろうとすると職人を増やしたり、それ以上になるとオーブンを追加しなければならなくなるなど、コストが増加していきますから、大量に作ろうとするほど1個あたりのコストがかさんでしまいます。

企業の規模の経済(大量生産)が働くのは収穫逓増産業と言えます。範囲の経済は異なる複数の製品をある程度まとめて製造させることでコストを下げようとするもの。絵柄が違うTシャツを別々の工場で生産するよりも1つの工場でまとめるほうが生産コストを抑えられるというようなもので、収穫逓減や収穫逓増とは直接関わることではありません。

集積の経済は、異業種の企業が集中して立地することで得られる外部経済のことで、トヨタが豊田市を作るようなイメージです。例えば工業団地のような集積地にすることで、部品メーカーと製造メーカーの物流コストやコミュニケーションコストが抑えられるような効果が得られるものです。

費用逓減産業も、いわゆる規模の経済でのメリットを受ける産業で、長期間生産することをあらかじめ想定した上であらゆるコストを下げて生産するというものなので、新規参入の障壁は高い。短期平均費用は固定費と変動費が存在しますが、長期平均費用は長期間で見れば設備投資も変動費にできる、という視点であるので、基本的には短期平均費用よりも長期平均費用は下回ります。

以上のことから、ウが正解になります。