平成29年経済学

代替効果と所得効果 | 経済H29-16

第16問
近年、保育や介護の現場における人手不足が社会問題となっている。この問題に対処するための方策として、これらに関わる職種の賃金の引き上げが検討されることがある。そこで、賃金の引き上げと労働供給の関係を考察することにした。
下図を参考にしながら、次の文中の空欄A〜Dに当てはまる語句として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

人手不足を解消するためには、現在働いていない人に新規に就労してもらうか、あるいは現在パート勤務などの短時間労働の人に今までよりも長い時間働いてもらうことが必要である。
すでに働いている人が賃金の上昇によってもっと働くようになるかどうかは、代替効果と所得効果によって決まる。賃金の上昇は、【 A 】効果によって労働供給を増やし、【 B 】効果によって労働供給を減らす。両者の関係は、通常、低 い賃金水準では【 C 】効果の方が大きく、高い賃金水準では【 D 】効果の方が大きい。したがって、現在の賃金が低い水準であるならば、賃上げは、労働時間を増やして人手不足の解消に寄与する。逆に、もし現在の賃金が高い水準にある とすれば、賃上げは労働時間を減らすことになる。

解答群
ア A:所得 B:代替 C:所得 D:代替

イ A:所得 B:代替 C:代替 D:所得

ウ A:代替 B:所得 C:所得 D:代替

エ A:代替 B:所得 C:代替 D:所得

代替効果と所得効果

労働時間は程度の差がありますが、一人に与えられる1日の最大時間は24時間に限られます。この24時間から余暇時間を差し引けば労働時間となります。つまり今回の問題は労働時間と余暇時間のバランスを問う問題とも言えます。

労働時間が0の時でも、最低時給・最低賃金がありますから原点スタートではなく少し上からスタートします。ある一定の部分までは余暇時間を労働時間に替えて労働供給を増やしていきます。しかしある程度まで行くと現実的に労働時間が確保できなくなることと、働きすぎると余暇の時間が貴重に思えてくるので、今度は余暇を増やそうとする。賃金を上げつつ余暇を増やそうとするので効率的に働くけれども労働時間は減っていく、ということです。

労働における代替効果

労働者は労働時間を提供していますが、労働供給をする立場で考えれば、余暇時間と労働時間という2つの財を選好しながら買っていることとなります。

労働における代替効果は、低賃金の段階においては、余暇の時間を労働時間に変化させることで賃金(満足)を得ることになります。お金にならない余暇の時間を減らし、お金になる労働の時間を増やすのです。

労働における所得効果

働けば働くほど賃金は上昇しますが、所得が上がると余暇時間の相対的価値が上がります。そのため労働時間を減らして余暇時間を増やす方に動きます。

答えはエ。