第6問 景気動向指数の個別系列は、先行系列、一致系列、遅行系列に分けられる。各系列の具体例の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア
先行系列:消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)
一致系列:実質法人企業設備投資(全産業)
遅行系列:法人税収入
イ
先行系列:所定外労働時間指数(調査産業計)
一致系列:耐久消費財出荷指数
遅行系列:営業利益(全産業)
ウ
先行系列:中小企業売上げ見通し DI
一致系列:新規求人数(除学卒)
遅行系列:新設住宅着工床面積
エ 先行系列:東証株価指数
一致系列:有効求人倍率(除学卒)
遅行系列:完全失業率
景気の動向に対してどう動くか
景気動向指数とは、景気に関する総合的な指標のこと。景気動向に対して先行的に動く指標、景気動向と一緒に動く指標、景気動向から遅れて動く指標があります。
採用系列数は、先行指数11、一致指数9、遅行指数9の29系列ありますが、景気循環に応じて見直しが行われますので、過去の解説とズレが生じるので注意が必要になります。
先行指数は景気動向よりも数ヶ月早く動き、遅行指数は一致指数に数か月から半年程度遅れて動く指標が採用されています。
消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)
消費者物価指数で生鮮食品を除く総合指数といえば、コアCPIでした。これは店頭で販売されている商品の価格調査をすることで物価がどのように市場に反映されているのかを測る指標で、毎月発表されています。
消費者物価指数は遅行系列です。例えばインフレーションになった場合、材料費の高騰が起きても商品価格はギリギリまで維持され、物価上昇に利益が圧迫されてようやく商品価格に反映されます。
ちなみに税金を含み、584品目の価格調査に加え、帰属家賃の変動1を加えた585品目を全国調査するものです。計算方式は、ラスパイレス式です。
実質法人企業設備投資
法人企業が設備投資にどれだけ投資したかを示す指標です。実質法人企業設備投資は、四半期ごとに提出される財務諸表を分析する事で判断される指標です。また、景気が良くなった場合、企業は現状の設備の稼働率を上げる事で生産を増やすことから始めます。それでもなお利益が見込めるとなった場合にはじめて投資されるものなので、遅効系列となります。
法人税収入
法人税は1年を通じて得た利益に対して翌年度に課されるものなので、景気動向からはかなり遅れて反映されることになります。これは想像しやすい遅行系列だと思います。
所定外労働時間指数
所定外労働時間指数は、いわゆる残業時間の増減で景気動向を見るものです。実質法人企業設備投資で説明したように、企業は景気動向に対してまずは既存の設備・人員で対応しようとします。景気動向によって受注が増えればすぐに残業によってカバーしますから、所定外労働時間指数は一致系列であると言えます。
耐久消費財出荷指数
耐久消費財とは、家庭で使われる耐用年数1年以上のもの、自動車や家電などがこれにあたります。覚え方としては、所定外労働時間指数で見たように、残業が増えれば当然生産も同時に増えることを意味しますから、出荷量も同時に増えるとイメージすることです。こちらも一致系列です。
営業利益
本業のもうけを意味する営業利益ですが、四半期ごとにまとめられます。生産と販売の成績はまさに景気動向を示すものなので、一致系列として扱われます。利益が確定するのは後だから遅行としがちですが、売上や利益がまさに景気動向そのものだと理解すれば間違えることはありません。
中小企業売上げ見通し DI
中小企業に対して、これからの売上げ見通しについて、増加・横ばい・悪化の3択でアンケート調査したもので、三大都市圏の 900 社に対して調査されるものなので、地方の状況とはやや異なります。
これからの状況に関するアンケートなので、先行系列であることは理解しやすいかと思います。
新規求人数
ハローワークでの求人求職者数でありパートタイムを含みますが、新卒は含みません。
実質法人企業設備投資、所定外労働時間指数でも説明した通り、企業は景気動向に対して、既存の設備や人の調整によって適応しようとします。景気が良くなろうとしている時、生産増加を見込んで新規採用を増やそうとします。社員訓練等も必要なので景気動向に対してやや先行して動きます。
有効求人倍率
新規求人数は先行系列なのですが、有効求人倍率は一致系列なので注意が必要です。一人に対して何人分の求人があるのかを表した指標が有効求人倍率です。景気が良くなれば一人1つ以上の求人がある状態となります。
完全失業率
新規求人数が先行系列、有効求人倍率が一致系列なのに対して、完全失業率は遅行系列なのでさらに注意が必要になります。
ただ、企業はできる限り解雇しようとしませんから、景気が悪化したことに対して遅れて変動することを理解できれば覚えやすいかと思います。
新設住宅着工床面積
新設住宅は、所得、地価、建築費、金利などに反応して動くものとされ、先行系列に指定されています。
東証株価指数
株価は景気に先んじて動くという点においては、誰しも納得できるところだと思います。先行系列です。株価は企業の将来価値を反映させた金額であるということも理解の一助になるかと思います。
2018年現在の現行遅行系列
以下の3点は現行の遅行系列において追加されたものです。
きまって支給する給与(製造業、名目)
消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)
最終需要財在庫指数
注意したいのは、最終需要在庫指数は遅行系列であるのに対して、最終需要在庫「率」指数は先行系列であることです。
正解はエとなります。