働き方改革

働き方改革 | スシローの事例

本記事は、当サイト管理者によるケーススタディであり、考察の内容と企業の意図する取り組みに差異が生じる可能性があります。

スシローが500店舗で2日間の休業日設定

スシローウェブサイトより

回転寿司チェーン市場シェア1位(2018年度)のスシローを展開する株式会社あきんどスシロー(以下、スシロー)は、2019年2月5日、6日の2日間、休業できない一部ショッピングセンター内店舗を除く全店舗で一斉休業を実施しました。

スシローでは、「より働きやすい環境作りの一環」としています。

企業概要

企業:株式会社あきんどスシロー
設立:1984年6月
資本金:1億円
事業内容:すしレストランの経営
従業員数: 社員:1,387名 アルバイト・パート:40,351 名
店舗数:509

2018年9月30日現在

飲食業界の置かれた環境と働き方改革

2019年2月現在、飲食業界のおかれている環境はより一層厳しくなる予想のもと、各社増収増益を達成し続けるための取り組みを着実に展開しています。

厳しくなる要因としては、原材料費の高騰、輸送費の高騰、人件費の上昇、消費者の消費意欲の不透明感、人手不足などがリスク要因として挙げられます。

回転ずし業界の市場規模は2018年予想値で6,000億円であり、スシローは2018年実績で売上高1,749億円。(出所:同社IR資料)

スシローの持ち株会社である株式会社スシローグローバルホールディングスでは、2015年以降の実績では増収増益を続けており、2018年の市場シェアはおよそ29%とみられ、業界トップシェアとなっています。

2日間で約9.6億円を失ってまで休業した意味

2018年度決算の売上収益1,749億円を純粋に日数で割ると、2日間で9.6億円となります。2月5日、6日は平日なので、休日の休業より損失は少ないと考えられるものの、2日間の休業は企業として軽い決断でないことは想像に難くありません。

共同通信によると、今回の2日間の休業は従業員からの要望であり、休日の確保が現場の士気向上につながると判断、働きやすい環境の構築を狙うものとのこと。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190202-00000089-kyodonews-bus_all

ケーススタディ | 9.6億円の投資

スシローの2日間の休業の決定は、今後の飲食業界を取り巻く厳しさへの対策であり、失う売上収益は、人材確保のしやすい環境に対する投資と判断したものと考えられます。

飲食業界でも例外なく人手不足に迫られています。

近年の労働環境への社会的な風当たりの強さは、企業としても到底無視することが出来ません。給料が同程度の選択肢があれば、労働者はより働きやすい環境へ流れるので、今回の2日間の休業は、将来的に人材を確保しやすくする狙いがあると考えられます。

スシローは年間30-40店舗の出店を進めており、今回の決定が今後出店する店舗におけるオープニングスタッフの確保もスムーズにする効果が期待できます。

また、大手飲食チェーン店における2日間の休業のニュースは珍しく、TV、ラジオ、インターネットで好印象をもって報道されており、全国的にスシローの知名度と好感度を上げる事に成功しています。

ニュースによる消費者への宣伝効果と、採用活動の円滑化効果は投資額を回収する見込みは十分であると言えるでしょう。

休みを取りやすい環境づくりの重要性

2019年4月から、有給休暇の消化が義務付けられる事になりました。

社員はパートアルバイトに比べると人数が少ない反面、パートやアルバイトが多い店舗では、社員がなかなか休みを取りづらい雰囲気が出る事があります。

会社が積極的に休業を提案することで、有給休暇を取得しやすい雰囲気の醸成にも寄与する効果が期待できます。

またパートアルバイトにとっても、従業員の声が通りやすい企業風土があると認識することができ、共同通信の報道にもあったように、士気の向上が期待できます。

従業員の士気が向上すれば、労働生産性の向上が期待でき、現場の改善活動にも良い影響を与えます。

現場が良い雰囲気になれば、店舗が活気づき、顧客が増え、結果として投資額以上のリターンを得る事につながります。

スシローの今後の課題

スシローの今後の課題としては、この働きやすい環境づくりを、より一層推進していけるかどうか、という点です。

スシローグローバルホールディングスは東証1部上場企業であるため、こうした働き方改革への取り組みは避けられない問題です。

ただし、一斉休業のような、売上収益を犠牲にする取り組みについては、株主の理解を得ながら行う必要があるため、効果の検証は不可欠です。

今回の取り組みについては株主からも一定の理解を得られているのは好材料であり、効果が明らかになれば、年中無休が基本の飲食業界そのものの慣習さえ変えてしまうパラダイムシフトが期待できます。

働き方改革を進める上で、スシローはこのパラダイムシフトを起こすトリガー役を担ったとも言えるので、好循環を生み出す情報提供がスシローには期待されます。

一方、業界シェア2位のくらコーポレーションも同様の状況である事を踏まえれば、業界シェア1位のリーダー企業としては先手を取った形となり、戦略としては望ましい形であったと考えられます。

また、人材の確保は飲食業界に限った話ではないので、働きやすい環境づくりを、今後さらに対外的にどのようにアピールしていくかを考えなければならない事が、スシローの課題といえるでしょう。

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